この本は非常に有名な本なので内容には触れませんが、あの太平洋戦争で、一体なぜ日本は負けたのか、を各戦場別に解説している本と考えてよいでしょう。

そして、その敗因を一言で言えば「組織の欠陥」に起因するものとして纏められています。

話が飛びますが、私が今のソフトウエア業界に身を投じて早十数年経ちます。一貫して言えることは、ソフト業界として、日本発として世界に誇れるものはほとんど産まれてはいないということです。
(TRONOSのやスパコンの京等はここでは除外して考えますね。最近のLINEは良いかも・・)

民生製品で言えばWindowsやMacといったPCのOS、そのPCのアーキテクチャ、iPad等のタブレット、スマートフォン用のandroid OS
、また、検索エンジンとしてgoogle、大局的にみてinternetそのもの、これらすべてが欧米から伝わってきたものであるのは誰も否定出来ないでしょう。

現在のIT分野を鳥瞰的に眺めて言えば、欧米から提供された開発ツールを使い、日本語OSで動くシステムを単純に製造しているに過ぎず、誇れるものなどはほとんど無いと言っても良いのです。
(無論例外はありますよ・・)

これらのことを一言で言うなら、つまり、日本は情報化産業分野においては後進国だということでは無いでしょうか。

たしかに、勝っている分野もあります。例えば任天堂やSONYのPLAYSTATION、そして昨今話題となったモバゲーやGREE等のゲーム業界などはそれなりの力があるのでしょう。

しかし、これも国産ゲームが美少女や萌え系などのライトなものを開発しているうちに、欧米や韓国、中国といった外国製の本格的なゲームが人気を集め、
日本国内はともかくとして、世界の市場では国産ゲームのシェアは大きく下がってきているのは紛れもない事実なのです。
任天堂は二期連続で赤字でしたね)

これからも世界で通用するゲームを生み出すことが出来るのかどうか、とても不安な状況になってきているわけです。
 

それでは、なぜこうも負けてしまったのでしょうか。世界で通用するサービスや基本ソフト等をどうして日本は産み出せなかったのでしょうか。


そのヒントが実はこの本に表されていると自分は思っています。
 

日本人は過去の成功事例に縛られすぎるのです。
日本人の美徳として、コツコツと努力を積み上げていくのがもっとも高く評価されます。これは企業の社長人事などでもよくわかります。もっとも調整能力の高い人が社長に選ばれるケースが多く、どんなに優秀でも一方で敵が多いタイプの人はなかなか社長にはなれないのです。

このような日本の企業文化では、先端的なアイディアや技術を持っているような人を、本来は大事にしなくてはいけないにも関わらず異端者として排除してしまい、画期的なアイディアを商品化することは非常に難しいのです。


欧米では全く逆で、特に
シリコンバレー等ではそんな人こそが採用され、また企業家として育っていきます。

そういう環境だからこそ、
突拍子も無いサービスが生まれたり、そのチャレンジ内容に賛同して投資を行うものが出て新たな産業が産まれてきます。そして世界中へ進出し、ビジネスの勝利を収めているわけですね。

戦争をビジネスに例えるなら、この本に書かれている内容はそのまま現代社会に置き換えることが出来るでしょう。なお、この本が善書なのか悪書なのかは読んだ人が素直に判断すれば良いと思います。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)