今日(書いている内に昨日になったが・・)は法事だったが、24日から公開された映画、沈まぬ太陽をレイトショー(20:00〜23:20)で観ることにした。
山崎豊子原作で曰くつきの小説の映画化ではあるが、あの重厚なストーリーをどのような切り口で映像化したのかがとても楽しみに(気に)なっていたのだ。
あらかじめ10分間のインターミッションがあるのは知っていたが、やはり上映時間が3時間超えというのはとても長い。しかし、沈まぬ太陽を3時間でまとめるのもさすがに無理が遭ったのではないかというのが自分の感想だ。(好きな小説だからこそ厳しい評価になるのだ)
小説では1,2巻が、懲罰人事により海外の僻地を足掛け10年間もたらいまわしにされ、それが表沙汰となって国内に戻れることになるまでの話。3巻が例の墜落事故により遺族係になる話。そして4、5巻が会長室編で不正と戦う話と時系列に進むのだが、映画では冒頭から123便の墜落事故でスタートし、その間に回想的に過去の不当配転に至る経緯を挟むという編集方法で前半は進んでいく。
これだと確かにスムーズに御巣鷹山編を物語に組み込み易いのだろう。しかし、そのお陰で海外僻地勤務時の物語がとても薄くなってしまった。10年間も左遷されて僻地をたらい回しされたという印象が皆無なのだ。まあ、子供達がいきなり大人になっていることで、時間が経過したということはわかるのだが・・
確かに冒頭からいきなり泣かせてもらったが、個人的にはものすごくもったいない気がした。映画も小説と同じく時系列的な編集であればもっともっと感情移入が出来て泣けただろう。
旧組合の委員長(それも無理やり頼まれてだ)として、事故が頻発していることから待遇改善を求めたはずなのだが、その前後に起きた人為的なミスや怠慢により発生した墜落事故のことをまったく挟まなかったので、単なるボーナスアップを目的とした団体交渉にしか見えなかった。(これも演出としてはきわめて不味いだろう)
次いでテヘランから家族は日本へ帰国する便に乗り、自分はさらに遠くのナイロビ行きに乗る別れのシーン。
小説を読んだ時にはぐっと来た部分だったが意外にあっさりしていたのもとても残念だった。ここはアフリカ編のハイライトシーンなのだ。ここも子供が現地の学校に行くシーンや、現地の子供にいやがらせされるシーンなどの苦労話を挿入しないから、その妻と子供を見送るときの恩地が一体どういう思いだったのか、普通に見送った時とはどこが違うのかがわかり難く、どうしても感情移入が中途半端になってしまったように思えた。
要するに、無理やりすべてを3時間に纏めたためにそれぞれのパートがみな薄くなってしまったという印象である。山崎豊子は反対したらしいが、やはり私は2部作にするべきだったと思う。恐らく小説を読んでいない人にとってはとてもわかりにくい映画になってしまったのではないだろうか。 それが少し心配である。
あとはネタばれになるとは思うが、飛行機のCGはすべてショボイ。もうちょっと頑張れなかったものか。なんだか10年前にもこれくらいのCGはあったぞ、と言いたいレベルだった。それからいい役者もたくさん出ているが、主役の一人、行天役の三浦友和は悪役という印象が薄いだけにちょっとイメージが合わないように思った。白い巨塔の財前役や今放送中の不毛地帯の壱岐正役が嵌まっている唐沢寿明のほうがはまり役だったのではないかと思う。決して三浦行天のすべてがダメというわけではないが・・まあ、私も映画は素人なので、あまり言い過ぎないようにしよう。
観て損はしない映画だと思うが、小説も読んでからの方がいいだろう。予備知識が無いと3時間は辛いかもしれない。
Comment
だそうですね。ネットでは昔から賛否両論で賑わっていました。
私もよしかわさんと同じくフィクションとして楽しむのが正しいと思います。
ただ、123便の自己事故だけはフィクションにしたところで現実には到底及ばないわけで、山崎豊子が実名で書いたというのも理解は出来ますが、現実と虚構が入り乱れることによって、あたかもすべてが事実であるかのような誤解が広まるのは良くないことです。
虚構は虚構として、事実と明確に区別するためには、墜落地点を御巣鷹山以外の山とし、クルーや被害者も実名にはしない、機種も747ではない機種にしておくべきだった、と自分は思いましたね。
アフリカを旅した時にガイド役として世話を取ったのが
日本航空の小倉貫太郎氏。
氏の親身なガイドや世話取りに感激した作者に、
問わず語りにぽつぽつと話された物語。
その小倉貫太郎氏
それが、沈まぬ太陽の物語なのだそうです。
当初、そのあまりの企業姿勢のひどさに憤慨した作者が、
取材の上作品化したいと申し出たのを、小倉氏は固辞。
作者の再三にわたる懇願の末、作品として世に出ることを得た・・
と言ういきさつがあったらしいですね。
ノンフィクションか、フィクションかの議論については、
ドキュメンタリーではなく、小説→映画の事ですから、
「限りなくノンフィクションっぽい、フィクション」として
楽しんで観る(読む)のが良いのでしょうね。
不毛地帯も原作は面白いですよ。ドラマはどうなるかは判りませんが、あの複雑な話を判りやすく構成して欲しいと思ってます。
MIXI退会の件は了解しました。あとでメールを送りますね。
映画は勝手に感情移入すればよほどではない限り楽しめます。
ちなみに諸般の事情によりmixiを退会しましたので、今後は何かありましたらメールにて連絡下さい。
何があったかは今度機会がある時にお話しします。
なぜか、事実を捻じ曲げているという批判が多い作品なのですが、フィクションとして見るのが正しい見方ですよ。
どうしてみんなこれを事実だと思ってしまうのでしょう・・伝記じゃないんだから(笑)
事実は123便が墜落事故を起こしたという物語の骨子であって、あとの部分はすべてが創作と思えばいいのです。
そういう意味で池田氏の論評は正しいと思います。なので、いかに主人公などに感情移入できるか、がこの映画を楽しむポイントになります。
ただ、観る前に小説を読んでおかないとちょっと厳しいかな。
池田信夫氏は、この本にずいぶんと否定的です。
私は本を読んでいない(恥ずかしい)し、事実関係を把握していないので、判断材料がゼロなので、何ともいえません。
フィクションだと割り切れば、それはそれでいいのでしょうが、先日の官僚たちの夏でも「実際には、通産省はあんなに一生懸命ではなかった」と、先日テレビで発言していた元官僚もいました。
世の中、いろいろなフィルターがありますから、事実を知るということは難しいものです。
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