キタノミナトさんのブログで激しい議論が展開されておりました。
ちょっと出遅れてしまいましたので、コメントではなく、自分なりに考えていることを書くことにします。
1.CALS/ECエキスパート(RCE)、CALS/ECインストラクター(RCI)について
CALSって何?って思っている方が世の中には大勢いらっしゃいます。この建設業界ですら理解されていない方がまだまだ多くいらっしゃいます。それはそうでしょう。自分の仕事、会社の仕事に必要の無いものであれば、知る必要もないから当然です。
ただ、それでは国は困るわけです。様々なものを電子化し、且つデータベース化していくことで、e-japanの実現に向かって進んでいかなくてはなりません。
これは国家そのものをデータベース化するとも言え、ITが発展してきた先進国である日本としては、もはや避けては通れない道なのです。今更後退は出来ない。
それなら、国が音頭をとって、勝手にやればいいじゃない?なんでやらないの?という声が聞こえてきそうですが、その通りです。GISにしろ地図データの電子化にしろ、国がどんどんと進めていけばよいのです。
ところが作成した矢先から、それらのデータは古くなっていくのです。つまりデータの鮮度が悪くなる。常時最新の状態で保持するためには、災害が起きる度、工事が行なわれる度に最新のデータに更新していかねばならないわけです。
ところが国にはそのお金も余裕が無い。で、どうするか?
調査、測量、設計をする業者や工事をする業者に図面を書いてもらえば、最新の図面が集まります。そして、その図面も共通のルール(CAD製図基準やSXF)で書くことによって、全国共通で利用できる図面となり、有効利用が図れるようになるのです。今のCALS/ECは丁度この段階に位置するものと思います。
従って、我々のような有資格者の仕事は、上記を踏まえて、CALS/ECの正しい知識を教授し、その必要性を唱え、普及啓蒙の役割を果たすのがまず第一の役割なのです。電子納品の支援業務そのものは副次的なものであって、本質的な仕事ではありません。ルールさえ理解していれば、資格がなくとも何の問題も無いのですから。
2.SXF技術者について
電子納品支援をビジネスとしている人には、この資格の方がより実務に近いかもしれません。
ただ、これもCADが使えなくても取得可能な資格です。もちろん図面そのものを描けなくても取れます。
従って、この資格者のスキルをあらわすことは残念ながら出来ていないのが実情です。
本来であれば、やはり実務経験や製図テストなどの有る試験のほうが良かったでしょう。(受験者は極端に減ってしまうかもしれませんが)
現実としては、RCE、RCIと同じく資金調達のための資格商法では?と揶揄されてしまうのも仕方が無いのかもしれません。ただ、目論みとしては、国際標準であるSXFの定着と普及ですから、決してやましいものではないと自分は解釈しています。この資格の意味を今後OCFがどう打ち出せるかによって、その価値が変わってくるでしょう。
公的なものでは無いにしてもOCFにはこれからも期待したいところです。
3.なぜCALS/ECは進まないのか
ミソも糞も一緒(汚い言葉でごめんなさい)にしてしまったのが第一の原因でしょう。
本当に必要なものとそうではないものの切り分けが出来ていないところが問題です。図面が必要になるのは言うまでもありませんが、打合せ簿や施工計画書などはオリジナルファイルの必要性がどこまであるのか?また、工事写真もすべて収集したところで本当に意味があるのか?ということです。
それぞれのデータにも、実はライフサイクルがあります。今だけしかいらないもの、後々まで残しておかねばならないもの・・そのレベルを無視して、一元化を図ったのが今の工事完成図書の電子納品要領(案)です。
本来は本当に必要なものだけを、必要な保存形式で、必要な保存期間を定めて管理するルールを策定しておけば良かったのです。
そもそもワープロにしてもPDFにしても、パソコンで文章を読むためのツールではありません。きれいな印刷物を作成するのが本来の目的です。情報だけが欲しいのであれば、書式などは不要なのです。検索すると必要な情報が取り出せるのが本来のITです。検索した結果がファイルで出てくるというのは実はIT化とは言いません。
つまり、従来の紙でのやり方の延長上に今のルールが策定されてしまったのがそもそもの間違いだったわけです。本格的にやるのであれば、受け皿(システム)が先になければならなかった。
残念ながらこれは国交省のミスリードでしょう。
恐らく、次世代型CALSでは反省を踏まえてその方向で進んでいくことになるかと思います。現実として、すでにそういったシステムも出てきているようです。近いうちに必ずそうなることでしょう。そしてその時こそ真のCALSが動き出すことになるのです。
4.インチキ業者を排除せよ
上記のキタノミナトさんのblogにありますが、インチキな電子納品支援業者が跋扈していると聞きます。私の参画しているCALSスクエア北海道のメンバーや、この建設ブロガーの会のメンバーでも、電子納品支援をされている方が多いのですが、皆さん電子納品を真剣に考えておられて、成果品データの品質にも大変気を配ってやっています。
ところが、中には業者の無知に付け込んで、インチキなデータを作成し莫大な費用を取っていたりするケースがあるんですね。人事ながら、この詐欺にも近い業者に対しては憤りを感じざるを得ないのです。
ましてやそれがこの資格者であるとのこと。このことは、この資格者全員の品位を貶めることにもなり、断じて看過できない事態であると言えましょう。
この、資格者を監督する立場であるJACICは、こういった事をどう見ているのでしょうか?やはり、資格者にあるまじき行為をした場合は、資格の剥奪などは必要かと思うのです。良心に基づいて仕事をしている資格者とは明確に区別して欲しい。そう言わずにはいられませんでした。
この人のために、すべての有資格者が疑念の目で見られているのだとすれば、とても悲しいの一言です。
長文になってしまいました。お読みくださいましてありがとうございました。
Comment
非常に参考になる記事でした。
実は、ココに長々とコメントを書いたのですが、投稿を止めました。
なぜって?
・・・・そのうちに、自分のブログに書こうと思って・・(爆)
本来ならH14年の電子納品開始当初から、照査システムが機能していれば、いわゆる"なんちゃって電子納品"を壊滅できたのは、誰の目にも明らかです。
北海道開発局では、今年度から過去の電子納品物を保管管理システムに保存する作業が進められていると聞いています。
できれば、この保存する業務終了後に保管管理サーバーにすんなり入らなかった(修正を余儀なくされた)工事や業務の件数を明らかにして欲しいですね。
その結果を踏まえてで結構ですので、もう一度電子納品の照査の必要性について今一度考え直して見ませんか?
参考にして頂いてありがとうございます♪
了解しました。記事を楽しみにしておりますね。(^_^;
電子納品成果品の照査についてはやったほうが良さそうに思います。納品時に発注者側がきちんとチェックを行っていれば、こんなに手戻りになることも無かったわけですね。
もし、RCE,RCIが照査業務を行うのだとしたら、SXF技術者と同じく、RCEもRCIもスキルの証明にはなっていないように思います。CALSスクエアや建設110番メンバーであれば、問題無いとは思いますが、だからと言って資格者のすべてが相当のスキルを持っているとは限りませんし・・
ですので、自分の考えは、RCE,RCIは適任者を選定する条件の一つであって、すべてではない。そう言いたかったのです。
保管管理のシステムが完成する前から電子納品を始めた事ですよね。
そのために電子納品の目的が不鮮明となっているのが現状です。
保管・検索が重視であるべき電子納品が現在では、保管・保存が重視されて検定までもCDで行うという馬鹿な考えまで持ち出される。
そもそもデジタル化を行っているのに重視という言葉を使わざるをえない事自体がおかしいのであってデジタルだからゼロか?1か?の判断基準でなければいけない。
ここで掲げたチェックシステムは管理ファイルのチェックだけではなくオリジナルファイル構成のチェックも含めてですよ。
そのためにはオリジナルファイルも完全書式化をしなければいけなくなります。
たとえばXLS様式を完全に統一すれば各セルからのデータ拾い出しが可能となります。
もっと進めば、オリジナルファイルをXMLで提出となればかなり高速の検索・抽出・一元化管理にできるんですけどね。
それは現行では無理と思われるでしょう。
私も無理だと思います。結論は現在の電子納品では集積するためのものだけに留まり
結果、必要がないということになると思います。
きっと数年後には新しい規格の中で改めて電子納品を始めるという流れになると思っています。
おっしゃるとおりですね。利用方法や保管方法を定めないままルールを作ってしまったところに、今の混迷の原因があるのは明らかでしょう。
この反省を踏まえて、正しい管理・運用のルールを確立させて欲しいと思っております。
そのためであれば、有資格者達は喜んで協力するのではないでしょうか?
零細測量設計会社が全てだとは言いませんが、うちの場合、特に若手は日々の業務をこなすだけで精一杯に見えます。
私が指導したり手伝ったりうるさく言わなければ、今でもなんちゃってが続いていたと思います。
お付き合いのある零細コンサンさん(特に支庁関係(農政)の仕事をしているところ)の社員の方と話をしていると、ほとんどが次のような結論になります。
CAD製図基準も電子納品も、やらなきゃならなくなれば、誰かがやるんじゃない。
午前様が当たり前の彼らを見ていると、何も言えなくなってしまいます。
これも気になるところですね。
厚生労働省は、労働時間の改善をすべての業界に対して指導しています。
ところが、公共工事従事者については、なぜか長時間労働を強いられています。
解決策としては、現場に人を増やすしかないのに、工事価格の下落によってその余裕は全くない。
この事に公共工事をバッシングする人たちは何の矛盾も感じないのでしょうか?
本当にマスコミの論調は無責任この上無いですね。既得権で最も守られている業界が、他の業界のルールに口だしすること自体がおこがましいことです。
建設会社で死人が出ますと、指名停止などの処分があり社会的に制裁を受けます。ところが例えば自動車メーカーなどでは死人が出てても営業停止にもならなければ何の社会的な制裁も受けない。これは大変におかしなことです。
まあ、この辺の話は、別の記事にしたいと思います。お楽しみに♪
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